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【ガイド記録】2025.10/27-29八ヶ岳 赤岳からキレット・権現岳・編笠山と青年小屋


晩秋に南八ヶ岳の険しい稜線を目指す

八ヶ岳赤岳の稜線からキレットと権現岳/奥に南アルプスを眺める

八ヶ岳連峰の主峰、日本百名山・赤岳から険しい岩場や鎖場、ハシゴが連続する稜線を越えて編笠山へ。緊張する縦走路を越えた先にある『遠い飲み屋』青年小屋で祝杯をあげることを期した今回の山旅。10月最終週の平日に4名様のご参加をいただき、ガイド山行を実施することとなりました。

美濃戸口から入山し行者小屋へ

出発前日までは日本列島を発達する低気圧が通過して各地で荒れた天候となりましたが、出発当日は徐々に天候が回復。登山口の美濃戸口を午後に出発する頃には晴天となりました。山裾の紅葉もピークに向かっているようでした。

北沢と南沢の分岐に建つ美濃戸山荘に到着して休憩。行者小屋を目指して南沢に入ります。入ってすぐに静けさが広がる苔の森になります。

前日までの雨にしっとりと濡れた苔が幾層にも重なって、まるで小さな森林みたいに足元に広がっています。

午後の傾斜がついた光線が苔の森を美しく照らします。しかしながら日没も近い晩秋につき、のんびりじっくり鑑賞することもできず、本日の宿舎である行者小屋を目指して先を急ぎました。

行者小屋に到着したのは日没直前。ヘッドランプは使わなくても歩くことができましたが、高速道の渋滞などもありぎりぎりの到着となってしまいました。本日の宿泊者は少なく、我々を入れて10名ほど。広々とスペースを使わせてもらうことができました。2Fの居室にはこたつもあり、ゆっくりとくつろぐことができました。夕食はとってもおいしい煮込みハンバーグ御膳でした。

赤岳の山頂から望む絶景と強風

未明に外を眺めると満点の星空。オリオン座とシリウスがひときわ輝いていました。早めの朝食を頂いて外に出ると明るくなり、稜線はうっすらと白くなって、気温はマイナス3度ほど。昨日午後のような稜線をごうごうと鳴らす強風は今のところ感じず、穏やかな一日の始まりを感じさせる空に期待が膨らみます。

身支度を整えて出発。行者小屋から地蔵尾根を使って登る予定にしていましたが、強風が予想されるためより風の当たりにくい文三郎尾根から登ります。樹林帯の地面は固く凍結し、今シーズン初めての霜柱を見ることができました。

徐々にきつくなる傾斜をぐんぐん登っていくと横岳から硫黄岳への稜線が近くなってきます。

北アルプスは雲に隠れて望むことはできませんが霧ヶ峰と美ヶ原は遠望できました。赤岳に連なる稜線上には中岳と阿弥陀岳が朝日を浴びて輝き始めます。

稜線の分岐に到着すると一気に南の展望が開けます。

これから赤岳の山頂に至ってその後に縦走する予定の権現岳、その遥か向こうには南アルプス北部の名峰がずらりと並んでいます。上の写真では右から仙丈ケ岳、甲斐駒ヶ岳、北岳、鳳凰三山の稜線が姿をみせてくれました。しかし稜線に出るとやはり風は強く、日が当たらない斜面ではきんきんに冷えた強風が一気に体温を奪っていきます。

稜線の斜面に成長したつららを見ながら、つめたく冷え切った岩場を慎重に登ります。

山頂直下のテラスに出ると正面に白い衣をまとった富士山が正面に、周囲に丹沢や御坂山地、奥秩父の山々までずらりと見渡すことができます。素晴らしいの一言、しばらく時間を取って絶景を楽しみました。

ついに南八ヶ岳の盟主・日本百名山の頂、赤岳に登頂!絶景に囲まれた快晴の山頂で喜びをかみしめます。

しかし赤岳山頂からの縦走が今回の山旅の核心部。山頂から岩場を下ってキレットを目指しますが、強風がひときわ吹き付けるようになり、思うようにペースが上がりません。風速10m以上の強風が体力を奪い、このまま縦走を続ければ大きなリスクにさらされることは明白でしたので、キレットの手前で計画を断念。文三郎尾根を辿って赤岳鉱泉を目指して下山することに決定しました。ご参加の皆様には残念な判断になりましたが安全が第一。また来年、編笠山と権現岳、青年小屋を訪れる目標ができたと考えて、行者小屋へと戻ります。

行者小屋に到着すると稜線の風はうそのように穏やかな気候。ちょうどお昼時なのでラーメンをいただきました。快晴の小屋前で絶景を眺めながらいただくラーメンは絶品!ゆっくりと休憩を取って、次は赤岳鉱泉へ向けて出発。

途中で中山展望台に立ち寄り、南八ヶ岳の屏風のような稜線を堪能しました。ほどなくして赤岳鉱泉へ到着し、今年改装されたばかりのお風呂に入ります。檜の香りがする新しいお風呂は最高でした。

夕食まではたっぷり時間があるので今回ご参加の方がご持参いただいた純米大吟醸で乾杯!重い一升瓶を担いでご参加いただき、誠にありがとうございました!岡山県児島からはるばる八ヶ岳まで運んでいただいた十八盛酒造の銘酒は芳醇な味わいがありながら後味がすっきりとしていて、全員いけるクチだったのであっという間に一本空けてしまいましたね。ごちそうさまでした。

そして赤岳鉱泉の夕食と言えば山の食事とは思えないステーキです!久々に味わう山小屋のステーキは本当に美味でした。

夕食を終えて就寝し夜中に起きると昨日と同じ満点の星空。稜線にかかるようにオリオン座が輝いて、部屋の窓からも星空を眺めながら休むことができて、山小屋の夜を印象深いものにしてくれました。

下山後は諏訪湖の観光地めぐりを楽しむ

最終日は赤岳鉱泉から北沢を経由して美濃戸口へ下山します。赤岳鉱泉では冬のアイスウォール造りにそなえて櫓が設置され、冬支度は万全のように見えました。私たちは何度も渓流にかかる木橋を渡りながら下山します。林道に出会うとそこからはカラマツの黄金色の黄葉、カエデの赤い紅葉などを楽しみながら歩きます。

素晴らしい紅葉の中をゆったりと歩いて下山。紅葉美の中でとても気持ちのいい歩行です。計画を変更しても、また違う楽しみを見つけられることはとても大事なことだと思います。

林床にはいかにもおいしそうなキノコがちらほら。こちらは傘の裏側がスポンジ状の特徴を持つイグチ科のきのこだと思われます。見たところ有名な食用きのこであるヤマドリタケに似ていますが、数年前からきのこ勉強中のため真偽はわかりません。

下山途中の林道では大きな赤い葉っぱがたくさん落ちていて、ヤマブドウが残っていないかとずっと捜し歩いていたら、ひと房だけ見つけることができました。一粒いただくと野生の甘味と酸味が口いっぱいに広がります。残りは野生動物のためにもとにあった場所へ。下山が完了した美濃戸口の八ヶ岳山荘ではモーニングコーヒーをいただいてほっと一息。予定より早い下山となったため、諏訪湖近辺の観光へ出発です。

まずは信濃国の一之宮・諏訪大社本宮へ。全国に一万社以上ある諏訪神社の総本宮で、勇壮な御柱祭りで有名ですね。境内には過去に祭りに使った御柱が立てられています。そして諏訪の銘酒といえば、諏訪大社のご宝鏡を名前に冠する真澄です。日本酒好きメンバーである我々がこれを看過・素通りすることはできず、それぞれに複数買い求め、諏訪大社直前のひなびた土産物店は一時の好況に沸きました。

そして諏訪湖の湖岸に聳える洋館、片倉館へ。こちらは諏訪の財閥・片倉家が築いた洋風の温泉施設です。千人風呂と言われる広大な大浴場は各所に素晴らしい装飾が施され、なかなか味わえない洋風の温泉入浴をした後は、関西への帰路へ。

今回は予定のコースを縦走することはできませんでしたが、ご参加の皆様のご協力のおかげで全員無事に下山することができました。そして来年の計画もいろいろとお話しすることができて今後の楽しみが増えました。この度のご参加、誠にありがとうございました!来年もまたご一緒に新たな山旅を楽しみましょう。

山旅ガイドサービス 井上


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