関西発着 日本山岳ガイド協会認定登山ガイドによる安心・安全な山旅ガイドサービス


【ガイド記録】2025.11/29 紅葉の犬鳴山


和泉山脈 日本最古の霊場を歩く

紅葉のベストシーズンに大阪と和歌山を隔てる和泉山脈の犬鳴山をご案内しました。犬鳴山は役行者が大峰山を開く6年前に開山されたことから日本最古の霊場、または元山上と呼ばれ、今なお多くの信者を集める修験道の名山です。犬鳴山というピークはなく犬鳴川渓谷一帯の山岳地と修験道の霊場を総称して犬鳴山と呼びます。日本有数の修験道の聖地であり、役行者が開いた1300年以上の歴史を持つ七宝瀧寺が信仰の中心となります。

紅葉の時期の土曜日ということで駐車場の混雑を予想しましたが、まだ時間的に早かったので十分な空きがありました。この広い駐車場のすぐ前には公衆トイレがあり、荷物の準備と体操を終えて出発です。

舗装路をしばらく歩くと車道の終点に犬鳴山の入り口があります。ここは古くから結界とされ、潔斎を済ませてから入山することとされていました。現在では女性も修験道に触れることができる霊場となっています。

渓谷沿いに続く参道は苔むした岩やうっそうとした森が続いています。

境内のイチョウの黄色とカエデの赤のコントラストがとてもきれいでした。

さらに進むと犬鳴山という山名の由来になった出来事が案内板に書かれていました。身を挺して主人を守った忠犬が讃えられています。

七宝瀧寺の前にある不動明王の前に到着しました。高さ7mの銅製の不動明王は日本最大の大きさです。黒光りする憤怒の表情を浮かべたお不動様は大迫力。日本古来の山岳信仰に大陸から渡来した密教の考え方が加わり修験道となりましたが、密教の中心的な仏様は大日如来です。宇宙の根本原理と同一とされる大日如来の別の姿が不動明王とされ、迷える衆生を救い、魔を遠ざけ勝利をもたらす神様とされています。故に商売繁盛や勝利祈願、武運向上のご利益があるとされ、古来多くの信仰を集めてきました。

私たちはお不動様の裏手より登山道に入って、燈明ヶ岳(天狗魔王岳)と犬鳴山最高峰・大天井ヶ岳を目指します。登山道に入ったらすぐに急登が連続、ペースを一定に保つため小休憩を何度か挟んでゆっくりと登りました。

ふと足元を見ると赤紫色の果実らしきものが落ちています。拾って実を割いてみると、ねっとりした果肉に包まれた種が顔を出しました。これはアケビの仲間のムベです。アケビは落葉しますがムベは常緑の葉を持ち、実もアケビのように勝手に裂けることはありません。見た目はグロテスクですが、果肉を口に含むとほんのりした甘味が感じられて上品な味がします。においはまるでバナナのようです。

急登もひと段落して展望の開ける場所に出たら、そこは第八経塚と言われる行場です。

大阪湾に浮かぶ関西国際空港とその奥には本州と淡路島を結ぶ明石海峡大橋が見えました。

さらに進むと分岐を経てやや荒れた登山道になります。しばらく進むと燈明ヶ岳(天狗魔王岳/558m)のピークに到着です。山頂には看板などありませんが、木に巻かれたビニールテープに燈明ヶ岳という名前が書かれており、すぐそばには天狗の石造が祀られています。現在は多くの樹木に覆われて視界がありませんが、かつてはこの天狗の石像が犬鳴渓谷を見下ろしていたのでしょうか。

燈明ヶ岳から先ほどの分岐に戻って稜線を東進すると犬鳴山直上の最高峰・大天井ヶ岳に至ります。こちらも行場となり、この奥は聖地につき立ち入り禁止となっています。大天井ヶ岳の直前にはロープが張ってあるかなり急な登山道がありますので登下降に注意が必要です。

大天井ヶ岳から下山にかかります。往路も通った登山道で倒木のすみにあったので気づきませんでしたが、大きなきのこがあるのに気づきました。特徴的な傘の形でアミガサタケかと思いましたが、あらためて調べてみるとスッポンタケという食用可のきのこでした。これは基部の真っ白い卵型の部分から一気に茎が伸びて傘の先端から胞子を飛ばします。形も独特ですがその匂いもまた非常に奇妙なもので生臭いようなアンモニア臭がありますが、アミガサタケの仲間なので食用にすることができます。ラテン語の学名を訳せば【恥知らずの男〇】ということとなり、言い得て妙といいますか、直球勝負の名前がついています。

急な下りをこなして七宝瀧寺に戻ってきました。ここからすぐ上には本堂があり、その奥には良くテレビの滝行で映像に出る行者の滝があります。この滝では3月から11月までの第三日曜日に滝行体験ができるということで、特に夏場はとても人気があって女性も滝行に参加することができます。テレビでよく見る滝にひとしきり感心して下山となりました。

駐車場に戻ってきました。ご参加の皆様の足並みがそろっていて予定より早く下山することができました。今日は快晴のお天気の中で、犬鳴山の霊場と紅葉を楽しみながらの日帰り山旅となりました。ご参加をいただき、誠にありがとうございました。

山旅ガイドサービス 井上


PAGE TOP