
関西・奈良県最高峰&日本百名山の大峰山脈 八経ヶ岳へ
関西最高峰、日本百名山の大峰山脈・八経ヶ岳へ1泊2日のゆったりプランでご案内してきました。この時期は山中にオオヤマレンゲが咲く時期、和名のオオヤマは大峰山に由来すると言われています。通常、このコースは日帰り登山をする行程ですが今回は山中の弥山小屋に1泊。ゆとりのある行程で関西の名峰をたっぷりと楽しんできました。



今回のコースは行者還トンネル西口からの往復を採用。2日間の日程で弥山小屋に宿泊し、トンネル西口に帰ってくる行程です。梅雨明け間もない大峰山脈、例年この時期は雨やガスの日が多く、何度もこの時期に登山した私もこんな青空は見たことがないほどでした。登山口で準備を整えて出発しても、爽やかな風が山中を通り抜け、コンディションがとてもいい中で登山のスタートとなりました。
大峰奥駈道は世界文化遺産に登録された祈りの道



大峰奥駈道は2004年に世界文化遺産へと登録された【紀伊山地の霊場と参詣道】の一部、役行者が開山した大峰山は熊野本宮から吉野山へ至る険しい山中を峰通しに約100kmも続いています。山中には75の靡(なびき)という祈祷のポイントがあり、修験者はこれらの靡で祈りを捧げて先に進みます。奥駈道とは神道と仏教の一派である密教が融合する自然崇拝をもとにした修行の道となります。



奥駈道の稜線を歩くとバイケイソウの大群落が次々に現れました。バイケイソウは全草にアルカロイド系の強い毒を含み、同じような地形に生える山菜のギボウシと似ているため、誤食中毒事故の原因となる植物です。特に芽吹きの時期はギボウシと大変良く似ているため、確信の持てない採取は避けたほうが無難と言えます。


弥山への急登が始まる直前に聖宝の宿へ到着。55番目の靡で大峰奥駈道中興の祖、理源大師・聖宝の銅像が安置されています。聖宝は平安時代の仏教僧であり、香川県に生まれ東大寺へ出家して弘法大師空海の実弟に学びます。この頃、大峰山には大蛇が出没し修験者を襲うということで、奥駈の道は廃れてしまいました。それを知った聖宝は奈良修験の屈強な先達・箱屋勘兵衛とともに大蛇討伐の旅に出ます。吉野山の奥地で聖宝がほら貝を吹いたところ、その音は周囲の山々に反響し、まるで百のほら貝が一斉に鳴り響いたように聞こえたと言われています。その大音響に誘われて出てきた大蛇を法力で絡めとり、勘兵衛とともに討伐に成功しました。その山は現在、百貝岳と呼ばれています。大蛇討伐の功により修験道中興の祖と言われる聖宝ですが、その後現在の黒滝村に鳳閣寺を建立して暮らしました。聖宝を慕う勘兵衛が奈良から訪問する度に餅や飯などを持参するため、勘兵衛のことを餅飯殿と呼んだため現在でも奈良市興福寺猿沢池の近くには勘兵衛の在所を餅飯殿町とする地名が残っています。高速餅つきが有名な中谷堂のすぐ南に奈良で最も古いと言われるもちいどのセンター街があるので興味がある方は訪れてみてはいかがでしょうか。
弥山小屋での憩いのひととき



急登を登り終え、本日の宿泊地・弥山小屋に到着しました。強烈な日射に疲れた体にガイド持参のスイカがしみわたります。今年のスイカは天候に恵まれて小振りでも甘くておいしい!本日は50名超の宿泊者がいるという弥山小屋にチェックインしました。



小屋で一夜を過ごし翌朝には弥山の山頂へ。これから登る八経ヶ岳の全貌を見渡すことができました。弥山小屋の前には多くのテント泊の登山者が、小屋泊の登山者もそれぞれの目的地へ出発していきました。
近畿最高峰の山頂は大展望



出発して約30分で日本百名山・八経ヶ岳に山頂へ。東の方向には重畳たる大台ヶ原、南には大峰奥駈道が続いている大パノラマの山頂です。


山頂から北に目をやると吉野へと至る大峰北部の稜線が続いています。行者還岳や大普賢岳、山上ヶ岳も遠望でき、南には端正な山容の釈迦ヶ岳が大峰南部への門番として聳えています。



八経ヶ岳の山頂より足を伸ばし、さらに南にある明星ヶ岳へ。八経ヶ岳が奈良県最高峰、弥山が奈良県第二の高峰、そしてこの明星ヶ岳は奈良県第三の高峰ということで、県内第3位までの高峰をまとめて登頂することができました。明星ヶ岳の山腹にはオオヤマレンゲのつぼみが見られましたが、残念ながら咲いている花はありませんでした。





八経ヶ岳の直下にあるオオヤマレンゲの群生地は株の数自体が昔に比べて非常に少なく、つぼみは認められるものの、きれいに咲いているお花はありませんでした。シカの食害を防ぐために厳重にフェンスが設置されていますが、気候変動の影響もあるのでしょうか。今後はオオヤマレンゲの群生地が回復することを願って止みません。



トンネル西口への下山もゆっくりと景色やお花や鳥の鳴き声を楽しみながら歩きました。下山後は国道309を通って洞川温泉に行く予定でしたが、渓流で水遊びを目的に大挙訪れた車のため、みたらい渓谷周辺の道が大混雑してデッドロック状態となり、残念ながら温泉への入浴はかなわず帰路へつきました。
今回ご参加の皆様、山中は話題が絶えず大変楽しい山旅となり御礼申し上げます。またのご参加を心よりお待ちしております。
山旅ガイドサービス 井上