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【ガイド記録】2025.9/15 オーダーメイド山行 大峰山脈・釈迦ヶ岳


オーダーメイド山行で大峰山脈の秀峰・釈迦ヶ岳へ

今回は私が所属する奈良山岳ガイド協会のホームページより山旅ガイドサービスを見つけていただき、関東からおひとり様のオーダーメイド山行のご依頼がありました。すでに日本百名山は完登されておられる方ですが、自分のペースでゆっくりと歩きたいというご希望のもと、大峰山脈の釈迦ヶ岳をご案内してきました。釈迦ヶ岳は標高1800m、世界遺産・大峰奥駈道北部の名峰にして日本二百名山・関西百名山にも数えられています。全方位の大展望を誇る山頂には高さ3.6mもの銅製の釈迦如来像が安置され、大峰の山々を眼下に微笑みを向けられています。

連休最終日の山行

今回のご参加は関東のご自宅から九州へ所要で出かけられ、その帰路に奈良に立ち寄って大峰登山をされるというご依頼内容でした。そのため九州から関西・奈良への移動経路、登山前日の宿泊先などの情報を打合せしながら、無事当日の出発となりました。橿原神宮前で1泊された翌早朝にガイド移動車にて合流し、現地へと向かいました。連休最終日とあって太尾の登山口も満車状態、広い路肩に駐車して、準備体操を終えて歩き始めました。

歩きはじめは樹林帯の中、幹がつるつるのヒメシャラや足元のきのこ、草原のトリカブトなどを見ながらゆっくりとばてないように歩きます。幸い下界のような蒸し暑さはなく、樹林帯を吹き抜ける涼風が気持ちのよい環境の中で歩くことができました。

樹林帯を抜けると正面には大峰奥駈道の主稜線が見えてきました。やがて顕著な三角錐のピーク・大日岳が現れました。大日岳は釈迦ヶ岳南峰に聳える尖峰で修験道の険しい行場があることで知られています。

さらに笹原が広がる稜線を進むと今回の目的地・釈迦ヶ岳が見えてきました。すれ違ったひとに聞いてみると朝早くはずっとガスに包まれていたということで、そのガスが切れてタイミングよく山頂を拝むことができました。いつ見てもすっきりとした三角形の山容は優美そのものだと思います。

山頂に近付くにつれて登山道は急になり、古田の森を過ぎると山頂への最後の登りとなります。道は細くなり岩ゴロが多くなりますのでゆっくりと慎重に歩きました。

ついに釈迦ヶ岳山頂へ到着しました。山頂は広く大きな釈迦如来像が周囲の山々を包み込むように屹立されています。この釈迦如来像は今から100年前の大正13年(西暦1924年)に大峰随一の剛力、岡田雅行氏が分割された銅像をひとりで担ぎ上げたものです。明治生まれの岡田氏は身長188㎝体重120㎏と当時では並外れた体躯を持ち、その威容はオニ雅というあだ名を付けられていたことでもわかります。それにしても台座だけで130㎏を越える重量物を複数回かけて担ぎ上げたその偉業は驚くべきものでしょう。

釈迦如来像の台座の裏側には薄い文字で【岡田雅行 独力ニテ運搬セシ者也】と刻印されています。さらに驚くのはこの釈迦ヶ岳山頂の銅像だけではなく、となりの大日岳の山頂にある大日如来座像、釈迦ヶ岳北方にある橡の鼻へ蔵王権現像も担ぎ上げたということで、その並外れた怪力ぶりが想像できます。

さらに釈迦ヶ岳の東山麓には前鬼という集落があり、そこには役行者が生駒山で従者にした前鬼と後鬼という夫婦の鬼の子孫が現在でも修験者の世話を命じられたことを守って宿坊を営んでいます。そのようなことをお話しながら昼食休憩を過ごしていると、先を急ぐ登山者はまたひとりと山頂から去っていき、いつしか山頂には釈迦如来と私たちふたりのみ。静かな山頂と徐々に晴れてくる絶景を大いに楽しんでからの下山となりました。

下山中に立ち止まって北方を振り返ると、それまでガスに覆われていた日本百名山・八経ヶ岳と弥山が姿をみせてくれました。さらに大日岳がすっくと立ちあがって勇壮な姿を誇示しているようで何度も目を奪われることになりました。残暑厳しい9月にあってこれほどの眺めに恵まれることは珍しいことでささやかな幸運を喜びました。

釈迦ヶ岳に後ろ髪をひかれるようにして下山。あれほどたくさんあった登山者の車はもうすっかりいなくなっていました。下山に時間はかかりましたが安全第一でケガなく下山できたことは登山ガイドとしての大きな喜びです。この度は遠路はるばる奈良の山にお越しいただき、誠にありがとうございました。大峰山脈だけではなく紀伊半島にはたくさんのいい山がありますので、またのお越しをお待ちしております。

山旅ガイドサービス 井上


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