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【ガイド記録】2025.8.5-6 キレンゲショウマの剣山と三嶺


徳島県・高知県最高峰 四国の名峰2座を訪れる

徳島県最高峰・日本百名山の剣山と高知県最高峰・日本二百名山の三嶺へ、2日間の日程で山旅をご案内しました。この時期剣山では深山の名花、キレンゲショウマが群落をつくり、登山者の目を楽しませてくれます。また高知県最高峰の三嶺ではミズナラやブナ、モミ・ツガの樹林帯から一転、笹原に覆われた大展望を誇る美しい山頂を訪れることができました。2日間ともに良い天候に恵まれて、少人数ながら和気あいあいとした雰囲気のとても充実した山行となりました。

日本百名山・剣山で大展望と名花を楽しむ

大阪を出発して淡路海峡と鳴門海峡を通過して剣山の中腹、見ノ越に到着したのは昼過ぎでした。今回は登山口への移動に時間がかかるので、山頂の往復はリフトを使っての山歩きを選択しました。平日でも駐車場の枠はほぼ満車、この時期の剣山の人気の高さを伺うことができます。リフトは一人乗りで、この時期には足元にヨツバヒヨドリやクガイソウが咲く斜面を楽しみながら、気軽に標高を上げることができます。

秋の花、ヨツバヒヨドリには複数のアサギマダラが訪れていて、その蜜を吸っている姿をみることができました。アサギマダラは季節によって日本と東南アジア、大陸の間を渡る長距離移動の蝶として有名です。秋は東日本から西日本の高山を渡る姿を見ることがありますが、四国の剣山でも秋の南下の途中の個体を見ることができました。最近では鬼滅の刃の人気キャラクター・胡蝶しのぶの象徴として描かれていることでも有名ですね。アサギマダラは幼虫の時に食草から毒を吸収し、体に蓄えることで鳥などの外敵に食べられないようになっています。これも鬼滅のストーリーを知っているひとにとっては納得のポイントです。

大展望の山頂と名花キレンゲショウマの群落

リフト終点の西島駅に到着。体操を終えて山頂を目指します。登山道は大変よく整備されており、歩きやすい道です。小一時間で山頂直下の剣山神社に到着、すぐとなりには剣山頂上ヒュッテがあります。

頂上ヒュッテの前は展望のよいテラスになっており、四国山地の眺めを楽しむことができます。夏の時期はすぐにガスが沸き、展望がないことが多いのですが、今回は眺めに恵まれました。

剣山の頂上部は広大な笹原になっていて、平家の馬場と言われています。これは昔、源平合戦に敗れた平家武士が落ち延びて山麓の祖谷渓に定着し、この剣山頂上部を訓練場として再起を図ったという伝説に由来します。昭和までは山頂部に気象観測所が設置され、富士山のレーダーと共に台風観測などに利用されましたが、その後気象衛星の発達によってその役目を終えました。またこれは都市伝説の類になるかもしれませんが、この剣山頂上部には古代ユダヤ教のアーク(聖櫃)が埋められているという伝説があり、数々の符合に興味深い点もあるので気になる方は下記のリンクを一読されてはいかがでしょうか。

剣山 ソロモンの秘宝伝説

山頂を後にしてキレンゲショウマの群落を訪れると、今が盛りのキレンゲショウマを間近に観察することができました。この花は一属一種の多年草で中国や韓国など東アジアに分布し、夏、森の木陰にうつむき加減に咲く上品な花が特徴です。作家・宮尾登美子の小説【天涯の花】に書かれていることでも有名ですね。主に西日本の山岳地帯に分布し、絶滅危惧種に指定されています。暗い森の中に明かりを灯すように薄黄色の花を咲かせる様子は一度は見てみたい山の花と言えるでしょう。キレンゲショウマのお花をたっぷりと楽しんだ後はリフトで下山し、奥祖谷の宿へ向かいました。

今回宿泊した宿は「旅の宿 奥祖谷」です。三嶺と登山口に一番近く、渓谷沿いの眺めの良い立地と郷土料理が自慢の旅館です。山菜や地元産のこんにゃく、川魚と堅豆腐を使った味噌仕立ての鍋がとてもおいしかったです。翌日の朝も早出のため弁当に変更してもらえるなど、登山者にやさしい対応で大変助かりました。

高知県最高峰、日本二百名山の三嶺へ

早朝宿舎を出発して車で約30分、名頃集落にある三嶺の登山口に到着しました。広い駐車場とトイレがあり、身支度と体操を終えて出発します。登り始めはやや急登ですが標高を上げるにつれて傾斜は緩やかになり、ブナやカエデ、モミやツガの樹林帯を登ります。今日も天気が良く暑いのですが、時折林間を爽やかな風が通り抜け、疲れをいやしてくれました。

樹林帯を過ぎると笹原の岩混じりの急登となり、そこを慎重に通過するとついに三嶺頂上部に到着です。山上には夏でも枯れない小さな池があり、なだらかな斜面にはコメツツジとミヤマクマザサが一面に広がっています。急な登山道を越えて山上に飛び出すと、いきなり優雅な世界が広がるので、いつきても大変いい山だなと思わせてくれます。

ついに三嶺山頂に到着しました。広い山頂には二等三角点があり、360度の大展望が得られます。ここで昼食休憩、宿でもらった昼食弁当をほおばります。平日のため他の登山者もなく、剣山へと続く長大な稜線を眺めながらの昼食のひとときは大変ぜいたくなものでした。

三嶺の頂上部には避難小屋があり、その奥には昨日登った剣山とその隣にそびえる次郎笈(じろうぎゅう)を遠望することができます。避難小屋は近年立て替えられて内部は大変きれいになりました。今回も剣山から縦走してきたという登山者とすれ違いましたが、避難小屋に宿泊してこの剣山から三嶺への遥かな稜線を縦走することは、ロングコースが好きな登山者にとっては憧れの縦走路となっています。

昼食後、避難小屋に隣接するトイレに立ち寄り、いよいよ下山します。樹林帯に入るまでは急な下りが続くので気が抜けません。小休憩で立ち止まった時、山の反対の斜面が崩壊しているのが遠望できましたが、その斜面が人の顔に見えてきてあれこれ勝手なことを話して楽しみました。また登山道にはすでにアキノキリンソウやヤマハハコなど秋の花が咲いていて、山の上は季節が進んでいることを実感しました。

奥祖谷の秘境を象徴する二重かずら橋へ

三嶺から無事下山。予定より早く下山できたので本来予定には入っていなかったのですが、サービスで奥祖谷の二重かずら橋を訪れました。二重かずら橋は雄橋と雌橋があり、清流を眺めながら揺れる橋を体験できます。足元は透けて渡し木の間隔が広いのでスリル満点です。山歩きだけではなく、その地域の観光や名物を堪能できるのも山旅ガイドサービスのガイド山行の特徴です。
今回ご参加の皆様、暑い中、四国山地のガイド山行にご参加いただき、誠にありがとうございました。すでに次回以降の予定もいただいていますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

山旅ガイドサービス 井上


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